「世界を変えた6つの飲み物 – ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史」

最近読んで面白かった本の話。世界を変えた6つの飲み物 – ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史

ビールやワイン、蒸留酒、コーヒー紅茶にコーラまで、その飲み物がどうやって開発されて、なぜヒットしたのか、社会にどんな影響を与えたのか、といった具合に、飲み物を通して歴史を語った本です。

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例えば、古代メソポタミアで最初に一般化したアルコールはビールでした。
なぜかというと、穀物を水につけておけば勝手に出来上がったから。穀物を水につけておくと麦芽糖ができて甘くなります。これが空気中の酵母と偶然触れ合ってアルコールに変化したのです。
原理的には果物とか蜂蜜でも可能なはずだったのですが、当時穀物はたくさんあったので、人類はこの偶然に改良を繰り返してビールを造る方法を学習しました。

7000年くらい経って都市が成立すると、ビールは一種の通貨として使われるようになります。エジプトでピラミッド建築の労働者が一日働くと、パン3-4斤と4リットルのビールがもらえたのだそうです。
必需品だから誰でもほしがるし、たくさん蓄えておいて公平に分け与えることができるので、通貨としては便利だったのですね。

このあと出てくるワインとも共通する話なのですけど、アルコールはそれ自体が殺菌作用を持つし、製造過程で沸騰したりしているので、かなり長い間、下手な水より安全な飲み物でした。
そういうわけで、ギリシャ時代ローマ時代の間に、食事の時にはビールやワインを飲む習慣が一般化します。
古代ギリシャでは、神官といえども朝食から(!)ワインを飲んでいたので、ちゃんと仕事ができる状態に戻るのに時間がかかって苦労していたのだそうです。17世紀になって、アラビア生まれのコーヒーがヒットしたのは、酔っぱらわなくてもいい食事時の飲み物、という理由だったのだとか。

西ヨーロッパは、数世紀の間立ちこめていたアルコール性のもやのなかからようやく抜け出した。「このコーヒーという飲み物のおかげで」と1660年にあるイギリス人が書いている。
「諸国において、節酒の傾向がよりいっそう進んでいる。徒弟や助手らはかつて、朝にエール、ビール、ワインなど、脳にめまいを起こさせるものを飲んでいたため、多くのものは仕事に適さない状態だった。
だが彼らは今や、この目を醒ましてくれる文明的な飲み物のおかげで、まともに勤められるようになっている。」

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一方お茶は、もともと中国で飲まれていた飲み物だったのですが、これも大航海時代にヨーロッパに渡って大ヒットしました。
とはいえ当時中国の技術力は圧倒的で、ヨーロッパの品物なんてあんまりほしい物がないよね、という状態。しょうがないのでヨーロッパ側は代金として銀を支払っていたのですけど、貴金属は限りがあるのでそうそう出せるものではありません。
あんまりにも高いので、「なんか安いお茶はない?」ということで輸入されたのが、うっかり放置して酸化させちゃった茶葉からできた安物のお茶「紅茶」だったのだそうです。
イギリスでは、苦い紅茶をおいしく飲むために牛乳を入れて飲むアイデアが発明されました。

ちなみに同じ頃日本では、高級品の茶を飲む作法にこだわった結果、世界に類を見ないほど複雑な「茶道」が生まれました。あんまり合理的じゃないところにこだわって、意味は分からないけどなんだか凄いものを作ってしまう国民性は、この頃から変わってないのかもしれないですね。

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